操上和美「時のポートレイト」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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操上和美「時のポートレイト」

2012年11月15日号

会期:2012/09/29~2012/12/02

東京都写真美術館 2階展示室[東京都]

操上和美は言うまでもなく、1960年代から日本の写真界の最前線で活動してきたひとりである。広告や雑誌の仕事だけでなく、コマーシャルフィルムの制作にも積極的に取り組み、2008年には初監督作品の映画『ゼラチンシルバーLOVE』も発表した。だが、50年あまりプロフェッショナルな映像作家として活動を続けながら、彼はむしろ自分自身のための写真の撮影にこそ情熱を傾けてきたのではないか。今回、東京都写真美術館で開催された「時のポートレイト」展には、それら日々の「眼の鍛錬の記録」と言うべき写真群がずらりと並んでいた。
展示されていたのは「陽と骨」「NORTHERN」の2シリーズ。1970年代からトイカメラを使って撮影されている「陽と骨」は、粗い粒子、コントラストの強いモノクロームの画像で日常の断片を切りとっている。「NORTHERN」は、1994年の父親の死をきっかけに、故郷の北海道を集中的に撮影した写真群で、92年と94年のロバート・フランクとの旅の写真も含まれている。両者に共通するのは、光と影の交錯、生と死の気配、現実と夢の境界領域などに鋭敏に反応する、まぎれもなく写真家特有の研ぎ澄まされた生理感覚と言うべきものだ。操上の仕事の写真は、クライアントの要求に充分に応える職人的なプロフェッショナリズムの産物と言えるが、これらのシリーズでは、あくまでも自分の見方に固執し続けている。その頑固な姿勢は潔いほどであり、仕切りを全部取り払って、周囲の壁にゆったりと作品を配置した会場構成にも、「これしかない」という揺るぎない確信を感じとることができた。

2012/10/04(木)(飯沢耕太郎)

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