初沢亜利「Modernism 2011-2021 東北・東京・北朝鮮」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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初沢亜利「Modernism 2011-2021 東北・東京・北朝鮮」

2012年11月15日号

会期:2012/10/04~2012/10/30

東京画廊+BTAP[東京都]

初沢亜利のような写真家について論じるのはむずかしい。彼の撮影のポジションは、「東北・東京・北朝鮮」という今回の展示の撮影場所を見てもわかるようにフォト・ジャーナリストのそれと重なりあう。実質的なデビュー作の「Baghdad2003」は、イラク戦争下のバグダッドで撮影されたものだった。
だが、今回の展示場所が現代美術を主に扱うギャラリーであることを見てもわかるように、作品の発表の仕方は従来のフォト・ジャーナリズムの枠にはおさまらず、そこからはみ出してしまう。初沢のようなタイプの写真家は彼ひとりではなく、かなり増えてきている。アート、報道、コマーシャルといった慣れ親しんだ写真のジャンル分けが、完全に解体しはじめていることのあらわれとも言えそうだ。
今回の「Modernism 2011-2021 東北・東京・北朝鮮」は、彼が覚悟を決めて撮影した意欲作である。震災直後の2011年3月12日から東北各地の被災現場を撮影しながら、初沢は前後4回にわたって北朝鮮に渡った。その合間に、彼のベースキャンプとでも言うべき東京も撮影し続けていた。展示された写真には、母親の葬儀の光景のようなプライヴェートな場面も登場する。そこに添えられた「Modernism」という言葉に、初沢の批評意識を見ることができるだろう。つまり19世紀以来営々と気づき上げられてきた「モダン」の枠組が、今や至るところで破綻しつつあり、彼が選んだ三カ所はまさにその最前線と言うべき場所なのだ。
写真を見ているうちに、それらの場所がどこか似通っているように感じてくる。東京はもちろん、東北の被災地や北朝鮮ですらも、消費文化の影に覆い尽くされている。90枚の大四つ切サイズの写真を2段に、アトランダムに並べた写真構成がうまく効いているのだが、このような展示は諸刃の刃のように思えてならない。観客の意識が、それぞれの写真がどこで撮られたのかを確認することに集中してしまい、それ以上深みへと広がっていかないからだ。キャプションをすべて排除したことも含めて、この連作の見せ方にはさらなる工夫が必要なのではないだろうか。
なお、今回の展示のうち「東北」のパートはすでに写真集『True Feelings 爪痕の真情。』(三栄書房)として刊行されている。「北朝鮮」のパートも11月中に写真集『隣人』(徳間書店)として刊行予定だ。これらの写真集をあわせて見ることで、彼の作品世界の広がりを確かめることができるはずだ。

2012/10/16(火)(飯沢耕太郎)

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