2018年06月15日号
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artscapeレビュー

希望の国

2012年11月15日号

園子温監督による『希望の国』の形式は原発映画だ。が、その理解だけでは狭すぎる。世界は不条理な外力=杭にあふれており、そこでお上やナショナリズムに救いを求めるのではなく、自己決定によって道を切り開くこと。3組の世代の違う男女は最後にそれぞれの選択を行なう。ゆえに、ラストで「希望の国」のタイトルが出る。実際、南相馬では、映画のように、お隣の家同士のあいだに、境界線が引かれている現場を目撃した。そして登場人物たちの言葉はリアリティをもち重い。とくに老夫婦がそうだ。が、個人的に多くの被災地をまわったせいで、柵や境界線の過剰なつくり込み、ロケ地のワープなどがちょっと気になった。『希望の国』は、黒澤明の『生きものの記録』の3.11以降版と言えるかもしれない。冷戦下の核への恐れが暴走する昭和の家父長制に対し、ポスト冷戦下に実際に起きてしまった原発事故の後に描かれたドキュメンタリー風でもある平成の家族像。ここに黒澤が描いた狂気へのアイロニーはなく、むしろ自己決定のポジティブさがある。

2012/10/28(日)(五十嵐太郎)

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