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山口晃 襖絵奉納記念「重要文化財養林庵書院」特別公開

2012年12月01日号

会期:2012/11/03~2012/12/02

平等院養林庵書院[京都府]

山口晃が京都・宇治の平等院養林庵書院(重要文化財)に14面の襖絵を奉納し、特別公開が行なわれている。養林庵書院は桃山城の遺構とも伝えられる建物で、狩野派の障壁画があるが平常は非公開である。彼の襖絵は、書院に通じる六畳+板間の部屋に設置されている。絵の内容は、楼閣風の蒸気機関車に乗った人々(死者の魂)が入京し、京都駅から極楽浄土へ向かって旅立とうとする群像&情景図だ。来迎図と洛中洛外図の形式を借りており、過去と現代と未来が融合した山口らしい作品である。また、隣室に通じる4面の襖は「南無阿弥陀仏」の六文字を書き連ねて藤棚に見立てたもので(平等院は藤の名所でもある)、襖をわずかに開くと一条の光(太陽光)が室内に差し込む。これは仏教の教えにある二河白道の見立てである。山口は今後、隣室にも12面の襖絵を奉納する予定。数年後の完成が今から楽しみだ。

2012/11/03(土)(小吹隆文)

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