artscapeレビュー

ドラマチック大陸──風景画でたどるアメリカ

2013年02月15日号

会期:2013/01/12~2013/05/06

名古屋ボストン美術館[愛知県]

ワケあって桑名に行った帰りに寄る。ボストン美術館のコレクションから、19~20世紀のアメリカを描いた風景画と写真を選んだもの。展示は東海岸のニューイングランド地方に始まり、南部、中西部を経て想像の風景まで地域別の5部構成。こういう展覧会の場合、1点1点の絵画の内容(風景)を堪能するか、それとも作品相互の違いを見比べるかという二つ(またはそれ以上)の見方があると思う。いいかえれば、東部の農村風景からナイアガラの滝、熱帯フロリダ、グランド・キャニオン、ヨセミテ渓谷まで広大なアメリカの多様な風景を楽しむべきか、トマス・コールらハドソンリバー派によるロマン主義的絵画をはじめ、スチュワート・デイヴィスやプレンダーガストらのモダンな油彩画、吉田博による多色刷り木版画、ウェストンやアダムスの精緻な写真、ダブやオキーフらほとんど抽象化された風景まで、アメリカ絵画の変遷をたどってみるべきか、悩んでしまうのだ。もちろん風景を楽しみつつ絵画史をたどればいいのだが、風景を楽しもうとすれば絵画の様式が目障りになり、絵画様式に着目すれば風景を楽しむどころではなくなるというジレンマがある。いちばんの解決策は、まずざーっと風景を堪能してから、今度は逆流しつつ絵画史をおさらいしてみることだ。幸か不幸か作品は計62点と多くないから、時間が許せば2度3度と往復して見ることをオススメする。いつのまにか展覧会の鑑賞講座になっていた。

2013/01/12(土)(村田真)

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