artscapeレビュー

絵画、それを愛と呼ぶことにしよう Vol.8 田中功起

2013年02月15日号

会期:2013/01/19~2013/02/02

ギャラリーαM[東京都]

絵画を巡る10組の連続展の8回め。ほかの作家たちは会期が1カ月前後あるのに、田中だけは2週間と短い。本人の都合によるものだろうけど、すでに差異化が図られている。案内状にはその2週間のスケジュールが載っていて、たとえば「ペインティング・トゥ・ザ・パブリック(東近美からαM)」「写生旅行」「持ち寄った絵について話す」といった予定が書かれ、最後に「会期中、会場を訪れるすべてのひとは自分が持って来たほとんどの絵を他のひとと共に展示することができます」と締めくくられている。つまり会場には田中功起の作品だけでなく、さまざまな人たちの持ち寄った絵が飾られてるらしいのだ。アンデパンダン個展とでもいうか。ちなみに「ペインティング・トゥ・ザ・パブリック…」とは、東京国立近代美術館からギャラリーαMまでみんなで絵を持って歩くという参加型のイベント。幸田千依の「歩く絵のパレード」と同じではないか。ま、絵を持って歩くだけならだれでも考えつくことだけどね。会場には少し空きがあるものの思ったよりたくさんの絵が並んでいた。まともに自分の作品を持ってきた人のほか、祖父の絵、なぜか長新太の絵、会田誠展のチラシにチョコッと書いたイタズラ書き、それに田中自身の10代のころの絵まであって、けっこう楽しめた。会田誠で思い出したが、もっとカゲキで、不謹慎で、えげつない絵もあるかと予想(期待)していたけどあまりなかったのは、展示するのが持って来た「すべての絵」ではなく「ほとんどの絵」と限定されていたせいか。展示を拒否された絵があったとしたら見てみたいもんだ。いずれにせよ、「絵画」への愛にあふれたメタ個展だった。

2012/01/23(水)(村田真)

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