artscapeレビュー

鈴木諒一「観光」

2013年03月15日号

会期:2013/02/01~2013/02/26

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

1988年生まれで、東京藝術大学大学院在学中の鈴木諒一の実力は折り紙付きだ。第一回EMON PORTFOLIO REVIEWでグランプリを受賞し、2012年に開催した個展「郵便機」でも、その可能性の片鱗を見せてくれた。サン=テグジュペリの小説に触発された前回の個展に続いて、今回も「書物」が主題となっている。本のページをめくっていると、時々その裏側の文字や図像が透けて見えてくることがある。そんな体験を作品化したのが今回の「観光」のシリーズで、図鑑に掲載された風景や動物たちが、逆光に照らし出されてぼんやりと浮かび上がってくる様を、多重露光のような効果で定着したものだ。
アイディアも手際も悪くない。「世界で一番遠くにあるページは、そのページ自身の裏側かもしれない」というコメントを見てもわかるように、思考を言語化する能力にも長けているようだ。だが、まだ「これこそが自分の作品だ」というフィット感に乏しい気がする。一皮むければ、いい作家になるのは目に見えているので、あと一歩の食いつき、追い込みを期待したい。別室に展示されていたもうひとつの新作「Books」にも可能性を感じた。本のページとページの間の隙間を、覗き込むように撮影したシリーズだが、むしろその素直なアプローチに面白味がある。

2013/02/14(木)(飯沢耕太郎)

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