artscapeレビュー

林ナツミ「本日の浮遊」

2013年04月15日号

会期:2013/03/26~2013/03/31

スパイラルガーデン[東京都]

林ナツミは今日もまた「浮遊」し続けている。昨年刊行した写真集『本日の浮遊』(青幻舎)や、ブログ、ツイッター、フェイスブック等で展開された活動の報告は世界中で大きな反響を呼び、空中を軽やかに舞う彼女の姿は時代のイコンになりつつあるようにも見える。
今回東京・原宿のスパイラルガーデンの円形スペースに、大きく引き伸ばして展示された作品群は、日付でいうと2011年4月以降に撮影されている。写真集には2011年1月1日~3月31日の「本日の浮遊」シリーズが掲載されているので、今回の展示は未収録の作品のみということになる。それらを見ると、彼女が空中に飛び上がる場所や状況の設定がより多彩で細やかなものになり、表情やポーズはより自然体で、ふわふわと宙を漂うような「浮遊感」がさらに強まっているのがわかる。
注目すべきはベトナム、ビエン・ホアの縫製工場で撮影されたという新作で、その巧みなポージングと画面の構成力は、これまでの「写真日記」のスタイルとは、やや次元の違うものになってきているように感じる。日々のひらめきや思いつきに頼るだけではなく、アイディアをしっかりと熟成させ、完成させていく方向に、彼女の仕事が進みつつあるのではないだろうか。『本日の浮遊』の続編となる写真集の刊行が、ますます楽しみになってきた。

2013/03/27(水)(飯沢耕太郎)

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