artscapeレビュー

棚田康司「たちのぼる。」展

2013年05月01日号

会期:2013/04/06~2013/05/26

伊丹市立美術館、旧岡田家住宅・酒蔵[兵庫県]

棚田康司は兵庫県明石市出身だが、大学進学以後関東を拠点に活動しており、本展は彼にとって初の地元個展である。大学時代から最新作までの彫刻約50点とドローイングが出品されており、これまで彼の作品を見る機会が少なかった関西の美術ファンを喜ばせている。棚田の作品は伝統的な一木造の木彫であり、華奢な胴体と細長い手足の人物が、よろめくようなポーズと上目使いで立ち上がろうとしている。印刷物や画像ではエキセントリックな印象が強かったが、実物を見ると強い意志がみなぎっていることに驚かされた。やはり実物を見ないことには何も始まらない。また、美術館に隣接する江戸時代の商家と酒蔵でも展示が行なわれており、ホワイトキューブ空間とは違う鑑賞体験ができるのも本展の魅力である。彼の最新作《たちのぼる》(2点組)では、東日本大震災で被災した仙台市の高校生と、阪神淡路大震災の年に生まれた明石市の高校生が制作に参加している。本作が2点セットで初披露されたのも意義深いことであった。

2013/04/06(土)(小吹隆文)

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