artscapeレビュー

口枷屋モイラ/村田タマ「少女ロイド」

2013年05月15日号

会期:2013/04/17~2013/04/28

神保町画廊[東京都]

口枷を使ったフェティッシュな写真とオブジェの作品を発表してきた「口枷屋モイラ」と、写真家・村田兼一のモデルからスタートして、自分も「大人の童話」のような作品を制作し始めた村田タマによるコラボレーション展である。
「少女ロイド」というのは、「2XXX年、ゆるやかに滅びつつある世界でなき主人のインプットした情報により、2体のアンドロイドが想像で“女子高生”の日常を演じるというSFストーリー」を元にしたシリーズだ。いかにもありがちな設定に思えるが、彼女たちはいたって真剣。豊富なアイディアを、玉手箱を開けるように次々にイメージ化してみせてくれる。特に、写真といろいろなオブジェを箱額に一緒におさめた作品がうまくいっていると思う。1980年代生まれの彼女たちにとって、コスチュームを身につけ、何かのストーリーを演じるという行為が、まったく特別なものではなく、日常の延長で軽々と成し遂げられるものであることがよくわかる。その無理のなさ、屈託のなさはやや拍子抜けしてしまうほどのものだ。
とはいえ、この「少女ロイド」の世界には、単なる絵空事ではない切実さがあるように思えてならない。「2XXX年、人類は緩やかに滅んでいった。人類の現象に伴い、学校や社会は機能しなくなった」という彼女たちが考えた舞台設定が、この国では決して現実からかけ離れたものではないことを、彼女たちもわれわれ観客も身に染みて実感しているからだろう。この二人のコラボレーション、一回で終わらせるのはもったいない気がする。「少女ロイド」の続編でも、新作でもいいから、あと何回か続けていってほしいものだ。

2013/04/25(木)(飯沢耕太郎)

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