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特別展覧会「狩野山楽・山雪」

2013年06月15日号

会期:2013/03/30~2013/05/12

京都国立博物館[京都府]

桃山時代から江戸時代初期の狩野派の絵師、狩野山楽・山雪の大回顧展が京都国立博物館で開催された。二人は狩野永徳の画系を継ぐ「江戸狩野」に対し、京の地にとどまり永徳の弟子筋によって展開された「京狩野」と呼ばれる。今展はその京狩野草創期に焦点をあて、初代山楽、二代山雪の生涯と画業を紹介するというもので、海外から里帰りした山楽の4件の作品のうち、初里帰りとなる《群仙図襖》(ミネアポリス美術館)と《老梅図襖》(メトロポリタン美術館)も見どころのひとつとなっていた。それらはもともと表裏一体だった襖絵。今回は50年ぶりの“再会”で、元の状態に復した展示となった。重要文化財13件、新発見9件、初公開の6件を含め、80件あまりが公開された大規模なものだったので混雑も予想していたのだが、意外にもゆっくりと見ることができ嬉しい。会場は山楽から山雪へと時代を移しながら二人の作品を辿っていくという構成。展示は、豊臣残党狩りの標的になった山楽が、類い稀なその画才と二代将軍秀忠や九条家に助けられて一命をとりとめ生き延びたという解説も興味深く、画風の変遷にも注意して見られるようになっていたのがとても良かった。山雪は《長恨歌図巻》や《雪汀水禽図屏風》など、その作品群から、細部まで徹底的にこだわる姿勢や、妥協を許さない気質も伝わってくる。ところがほんわかとした雰囲気の《猿猴図》など、意外にも素朴でとても可愛らしい作品も描いているからそれもまた魅力的だ。それぞれのキャラクターと時代の流れがよくわかる展示構成だったのが素晴らしかった。見応え十分だったのはもちろんだが、このような規模で見られる機会も貴重だっただろう。良いものを見ることができて大満足。

2013/05/10(金)(酒井千穂)

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