2018年10月15日号
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artscapeレビュー

かもめマシーン『スタイルカウンシル』

2013年07月01日号

会期:2013/05/28~2013/06/02

STスポット[神奈川県]

萩原雄太さん、『スタイルカウンシル』を見ました。この作品は客席の観客に向けられているようで、「未来」や「宇宙」の言葉で指し示された不在の対象に向けられていました。この仕掛けにぼくは率直に感動してしまいました。本作は「3.11以後」の作品です。いわきで取材し、そこで収録したインタビューが用いられています。ボイスレコーダーを手にした役者が、イヤフォン越しにインタビューの音声を聞き、被災者の言葉を役者が口伝えすることで、事柄の焦点は具体化されていました。福島で取材した人の思いを舞台に上げること、同時に、取材したときの萩原さんの思いを舞台に上げること、これが本作のひとつのベクトルです。しかし、それにとどまらず、一体それをしてどうなるのか、被災地への自分の思いはどうしたらいいのか、もうひとつのベクトルはそこから発して、人類の姿を宇宙人にどう説明したら説明したことになるのかという問いへと向かっていきます。ぼくは単純にそのベクトルが引き出されたことに、感動してしまいました。ああ、この芝居の観客はぼくたちではなくて、宇宙人なのか! 宇宙人という観客に見せたい人類の姿とはなにかと問う一方で、リアルの観客は舞台から見放されるのか! 真の観客は神であるバリの芸能がそうであるように、特殊な関係性を舞台空間に構築した気がしたのです。萩原さんの試みは、荒唐無稽に思われるかもしれません。けれども、萩原さんの真面目さが、ここまで至らせたというところになんというか狂気を感じて、ぼくは魅了されました。ただし、こうなると真面目さの真実性が問われることになるのでしょう。萩原さんの真面目さは演技なのか本気なのか、そこが本作の一番の焦点のように思います。真面目さが突き抜けて、芸術どころじゃないと社会活動に向かう人もいるでしょうし、社会と芸術の関係に思い悩んだ末、芸術活動に専念すると決める人もいるでしょうが、萩原さんにはぜひとも、「(芸術も社会活動も)どっちもとる」という立場を選択して欲しいと思ってしまいます。そこで戸惑いあたふたすることも、ひとつのパフォーマンスでしょうし、ひとつ決定的なポイントを見つけて徹底的に掘り下げるのも、見所多いパフォーマンスになりうるかも知れません。たとえばセリフに「それは(ここにはいない誰かが演劇では「いる」と錯覚できること)、錯覚だけれども、僕らのその気持ちは、本当に、あります」「僕らは、僕らを信じます」などという言葉がアイロニーではなく、ストレートな表現だとしたら、この作品は萩原さんの芝居という以上に演劇論であり、もっといってよければ信仰告白です。告白を聞いてしまった観客の一人として、その信仰を萩原さんがどう生きるのかというドラマを見ていきたいと思っています。

2013/06/02(日)(木村覚)

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