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artscapeレビュー

介護とデザイン

2013年08月01日号

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会期:2013/07/17~2013/08/12

松屋銀座7階・デザインギャラリー1953[東京都]

介護の場で求められるものはなにか。デザインにできることはなにか。本展は長年介護ロボットの開発を手がけてきたデザイナー喜多俊之による二つの事例を手掛かりに、高齢化社会と介護環境におけるデザインによる問題解決の行方を探る企画である。提案のひとつは「ROBOHELPER SASUKE」(マッスル株式会社)。要介護者のベッドから車椅子などへの移乗を支援するロボットである。もうひとつは、「wakamaru」(三菱重工業株式会社)。これは物理的な支援を行なうのではなく、コミュニケーションを目的としたロボットである。医療や介護の現場ではさまざまなかたちで機械化の試みが行なわれてきている。産業における機械化との違いは、対象が形態や重量などの点で非常に多様性がある「人間」を扱わなければならないという点であろう。もちろん物理的な問題だけであれば解決は比較的容易であるが、人間には心がある。そのために、フォークリフトで荷物を運ぶような解決で済ませるわけにはいかない。背後に機械が存在したとしても、インターフェースがより重要になる。通常であれば機械のインターフェースは操作者を対象とすればよい。しかし、福祉機器の場合は操作者と同時に操作の対象(=人間)に対するインターフェースがより重要になる。それでは、人対人の関係に機械が介在するとき、いったいどのようなインターフェースであれば、機械の向こう側にいる人間をお互いに感じることができるのであろうか。「ROBOHELPER SASUKE」は要介護者の側では、専用シートに差し込まれるアームが人間の腕が人を抱き上げるのに似た操作を実現する。操作者の側では力覚センサが操作者の意図を関知して動作を「支援」する、パワーアシスト型の機構となっている。「自動化」ではなく「支援」が、このインターフェースのキーである。「wakamaru」は造作、大きさ、色、動きなどの点でより望ましいインターフェースを探る試みと言えよう。介護の現場にどのように機械が導入されるかは、最終的には人と機械の相対的なコストの問題であると思われるが、コストの問題がクリアされたとき、デザインで先行する福祉機器メーカーには、より大きなビジネスチャンスが訪れるに違いない。[新川徳彦]

2013/07/18(木)(SYNK)

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