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artscapeレビュー

鈴木悦郎──エンゼル陶器の仕事

2013年08月01日号

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会期:2013/07/03~2013/07/15

あるぴいの銀花ギャラリー[埼玉県]

画家・挿画家の鈴木悦郎(1924- )は、中原淳一の雑誌『ひまわり』『それいゆ』や富国出版社の『少女世界』などの挿画、児童雑誌『ぎんのすず』などの絵本、教科書や書籍の装幀、シールやハンカチなどの雑貨、学習教材のパッケージやお店の包装紙など、さまざまな仕事を手掛けてきた。その多彩な仕事のひとつに陶磁器のデザインがある。鈴木悦郎は昭和30年代半ばから20年以上にわたって、200種類を超える陶磁器のデザインを手がけてきたきたという。当初は「みわ工房」という製陶所が制作にあっていたが、その後、岐阜県多治見の「エンゼル陶器」で制作・販売された。エンゼル陶器は20年以上前に廃業してしまったが、今回の展覧会では、経営者の手元に保存されていたサンプル製品のほか、悦郎がデザインした陶磁器の図面や版下、製品カタログが出品された。
 中原淳一や内藤ルネが描いた少年少女像とは異なり、『ひまわり』『それいゆ』を飾った悦郎の挿画は、武井武雄や初山滋の童画の系譜につらなる、どこかエキゾチックで素朴な線が特徴である。陶磁器の仕事では絵付けや色彩が魅力的なことはもちろん、器の形も──その時代特有のものなのかも知れないが──古めかしいという印象を与えるものではなく、むしろモダン。なかには悦郎自ら器形をデザインし、特許をとった製品もあった。彼はただ意匠を提供しただけではなく製品全体に目を配り、エンゼル陶器のロゴマークや「ひびをたのしく」というキャッチフレーズも手がけている。一企業をトータルにコーディネートしたデザイナーでもあったのだ。
 展覧会場の「あるぴいの銀花ギャラリー」は、フレンチ、イタリアンなどのレストラン、ショップなどから構成される「アルピーノ村」の一角にあるギャラリー。マダムの阪とし子さんが悦郎の大ファンということで、レストランには数々の悦郎作品が掛かっているほか、窓のステンドグラス、シンボルマーク、メニューやお菓子の包装紙に至るまで、そこここに悦郎デザインを見ることができる。ギャラリーのマークも悦郎による描き文字だ。ギャラリーでは1988年から年に2回、鈴木悦郎の絵画の個展が開催されていた。毎回全国からファンが訪れ、出品作品はたちまち売約済みになる人気であったとか。残念なことに、高齢もあって新作の個展は昨年末が最後の開催となったそうであるが、ご本人がお元気なうちにその仕事を包括的に振り返る展覧会を実現して欲しいと願う。[新川徳彦]

2013/07/03(水)(SYNK)

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