artscapeレビュー

大竹夏紀 個展6

2013年08月01日号

会期:2013/07/15~2013/07/27

GALLERY b. TOKYO[東京都]

ろうけつ染めを駆使した染織絵画で知られる大竹夏紀の個展。
きらびやかな少女をモチーフとしながら、それらの図像を支持体から切り出して壁面に直接貼りつける方法はこれまでと変わらないが、アイドルたちを彩る造形や色彩はこれまで以上に過剰になっていたように見受けられた。全身を収めた構図ではなく、頭部を中心に構成された作品が多かったせいか、顔の周りに装飾された花や星、宝石などの描写も、色彩のグラデーションも、目眩を催すほど、非常に細かい。
華美な装飾性はアイドルに必要不可欠である。ところが、大竹の作品が面白いのは、デコラティヴな方向性を極限化することによって、装飾されえない少女の本質的なところを浮き彫りにする逆説を生んでいるからだ。装飾が過剰になればなるほど、少女たちの白い地が際立つと言ってもいい。実際、見る者がその色彩と造形に目を奪われることは事実だが、絶え間ない視線運動がどこに行き着くかというと、それは顔面の中央、すなわち何物にも染まっていない絹の下地なのだ。
そこに何が隠されているのか、ほんとうのところはわからない。けれども、その空白に視線が誘われることの意味は大きい。装飾や化粧の本質を突いているからではない。描くことの意義が描かないことに置かれているからだ。

2013/07/19(金)(福住廉)

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