2017年08月01日号
次回9月1日更新予定

artscapeレビュー

吉田和生「TB」

2013年10月15日号

twitterでつぶやく

会期:2013/08/30~2013/09/23

hpgrp GALLERY TOKYO

吉田和生は1982年、兵庫県生まれ。2004年に滋賀県立大学人間文化学部卒業後、グループ展などを積極的に組織し、「群馬青年ビエンナーレ2012」では大賞を受賞するなど、意欲的な活動を展開してきたのだが、やや意外なことに今回の東京・原宿のhpgrp GALLERY TOKYOでの展示が初個展になるのだという。
彼の仕事は、身の回りの光景や東日本大震災の被災地などを撮影した時代性、社会性がやや強い作品と、より抽象度が大きいデジタル処理による構成的な作品に大別されるが、今回の「TB」展は後者に大きく傾いている。「Sky Scape」「Sheet Scape」など、タイトルに「Scape(風景)」という言葉は入っているが、現実の風景ではなく、画像にノイズを入れたり、スキャニングの過程で紙を動かしたり、インクをはじく透明シートにプリントアウトしてドット状のパターンを作ったりして、とても込み入ったデジタル的な「Scape」を形成していく。そうやって出来上がった画面が、ある種の「自然」の一部を思わせる形状、構造を備えているように見えてくるのが面白い。「Sky Scape」のシリーズは、画面がちょうど2分割されていて、あたかも空、水平線、海のようでもある。これは明らかに、杉本博司のよく知られた作品「Seascapes」への軽やかで的確な批評だろう。
この世代から、写真に対する新たな思考と実践が芽生えてこないかと、以前から期待していたのだが、吉田がその有力なひとりであることが、今回の個展で証明されたのではないかと思う。

2013/09/04(水)(飯沢耕太郎)

▲ページの先頭へ

2013年10月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ