2018年10月15日号
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artscapeレビュー

川本健司「よっぱらい天国N」/「よっぱらい天国M」

2013年10月15日号

GALLERY SHUHARI/M2 gallery

会期:2013年8月22日~9月8日/8月26日~9月1日

今回、東京・四谷三丁目のGALLERY SHUHARIと新宿御苑前のM2 galleryで同時期に開催された「よっぱらい天国」展には、川本健司が2008年頃から撮り始めた同名のシリーズが展示されていた。川本は吉永マサユキが主宰するresist写真塾を卒業後、GALLERY SHUHARIを共同運営するメンバーのひとりである。同塾の出身者には、やや愚直なほどにひとつの被写体、同じテーマにこだわり続ける者が多いが、川本の「よっぱらい天国」もそのひとつだ。
タイトルが示すように、川本が撮影し続けているのは、東京とその周辺の鉄道の駅や広場、バス停などで酔っぱらってうたたねしている人物たち(ほとんどが男)である。確かに、よく目につく被写体には違いないが、なかなか長期間にわたってシャッターを切り続けるのは難しいはずだ。彼も最初は何気なくカメラを向けたのではないかと思うが、そのうち彼らの存在の面白さに気がつき、集中して撮り続けるようになったことが想像できる。このような無防備な姿を、何の躊躇もなく人目にさらすことができる国はそれほど多くないはずで、これだけ数が増えてくると、日本の現代社会を象徴する光景として分析の対象になるのではないかと思う。貴重なドキュメンタリーであり、労作と言えるのではないだろうか。
ただ最初は35ミリカメラで、次は4×5判の大判カメラで、最終的には6×7のフォーマットで撮影するようになって、画面の中の酔っぱらいの男たちのたたずまいが、おさまりがよく、ほぼ均一に見えてくるのが気になる。背景となる風景とのバランスに気を取られすぎて、当初の異様な雰囲気が薄れてしまっているのは、それでいいのだろうか。資料的価値だけではなく、表現としての可能性を再考する時期に来ているのかもしれない。

2013/09/05(木)(飯沢耕太郎)

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