2018年10月15日号
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artscapeレビュー

秦雅則「Thanksgiving on summerday?」

2013年10月15日号

TS4312[東京都]

会期:2013年9月6日~29日(金、土、日曜のみ)

以前「秦雅則は不思議な生きものだ」と書いたことがあるのだが、今回東京・四谷三丁目のTS4312で展示された彼の新作を見て、その思いがさらに強まった。発想と、それを形にしていく手続きの両方に、独特の歪みとバイアスが働いているように感じるのだ。
今回のメインとなるDVD作品は、男女両性具有の二人の「神」を表象しているのだという。例によって何人かの男女の顔やボディをパソコン上で継ぎはぎし、ぎくしゃくとした動きを加えている。「神」の周囲には色鮮やかな花々が咲き乱れ、それらが生成と消滅をくり返している。反対側の壁に8組のポートレート作品が並ぶが、これもどうやら複数のモデルの顔のパーツを繋ぎ合わせたもののようだ。片方の顔は、やや苦しげで沈痛な表情が多いが、対になるもうひとつの顔の前には、「神」の周囲に咲いていた花が開き、笑顔や安らぎの表情に変わっている。それとは別に、なぜかメスとオスのグンジョウツノカミキリを一対にした作品も展示されていた。
これらの作品が何かの寓意を表現していることは確かだが、テキストがほとんどないので、解釈は鑑賞者にゆだねられている。とはいえ、秦が組み上げた「神や神らのいたずら」の物語に、奇妙なリアリティと説得力が備わっていることも確かだ。「神」にも人間たちにも、どこかで見たことがあるような既視感と、気味が悪いほどの生々しさがある。パソコンの画面上にのみ存在するこの神話空間を、もう少し緊密に創り続けていくと、とんでもないスケールの大きさを備えた作品世界が生まれてきそうな予感もする。

2013/09/15(日)(飯沢耕太郎)

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