伊丹豪「Study」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

伊丹豪「Study」

2013年10月15日号

会期:2013/09/21~2013/10/03

POST[東京都]

伊丹豪は1976年、徳島生まれの写真家。2000年代以降、個展やグループ展への参加を中心に積極的に作品の発表を続けてきた。視覚的なセンスのよさは以前から際立っていたのだが、何を目指そうとしているのか、ややわかりにくいところがあった。ところが、8月にRONDADEから最初の作品集として刊行された『STUDY』と、それを受けて開催された東京・恵比寿のPOST(旧Lim Art)での同名の個展を見て、彼の写真の方向性がかなりきちんと定まってきたように感じた。
作品集は凝りに凝ったデザインワークによる造本で、最初に黄色の地に「Study/ Go Itami/ Born In Tokushima, Japan/ 1976」とのみ記されたページが50ページほど続き、その後でようやく写真のページが始まる。29点の写真はすべて縦位置で、最初の一点を除いては「上下2枚で写真が立ちあらわれるように」レイアウトされている。どうやら写真家よりもデザイナー、編集者主導の造本だったようだ。この写真集を踏まえた展示では、逆に「デザインの枠からふたたび写真が抽出」されることが目指されており、「1枚の写真、また、空間を支配する群れとして提出」されていた。確かに、伊丹本人の意図が、展示によってくっきりと見えてきたように見える。会場には作品を色面ごとに分解・分割して表示したサンプルも掲げられており、それを見るかぎり伊丹の関心は都市の街頭を色面の重なりとして再構築することだと思われる。ただ、写真集には室内に置かれた鉢入りの植物、液体の表面、重なり合った足(あるいは手)のクローズアップなど、異質な要素から成る作品もおさめられており、多様な方向に伸び広がっていく可能性を感じる。さらに「Study」を推し進めていくことで、より鮮明な世界像が浮かび上がってくるのではないだろうか。

2013/09/23(月)(飯沢耕太郎)

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