2018年10月15日号
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artscapeレビュー

あいちトリエンナーレ2013 オープンアーキテクチャー 朗読劇「ベアトリーチェ・チェンチ」

2013年10月15日号

会期:2013/09/27~2013/09/28

名古屋陶磁器会館[愛知県]

名古屋陶磁器会館のオープンアーキテクチャーと、田尾下哲らの演出による朗読劇「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」が開催された。まず1932年竣工の会館を見学し、輸出用の陶磁器産業が栄えていた歴史と、戦後に入ったデザイン事務所とリノベーションについて説明が行なわれる。続いて陶磁器会館の2階を使い、父殺しで処刑されたベアトリーチェを描いたとされる一枚の絵をめぐる朗読劇がスタートした。実はこの会場に決まるまで、ほかにさまざまな近代建築の候補を訪れ、検討し、ようやく決まったのだが、最初からこの場所のために制作されたと思えるほど、空間の相性がよい演出だった。朗読劇は、画家のグイド・レーニとある訪問者の会話(1615年)のシーンと、チェンチ家の事件が起きた1596~99年の回想シーンが交互に登場しながら、物語は進行していく。照明の効果だけで劇的に空間は変わるのが印象的である。特に奥の浅いアルコーブが光のたまり場として闇に浮かぶ。第一幕は強権的な父フランチェスコと娘ベアトリーチェのただならぬ関係を軸に展開するが、第二幕はむしろグイド・レーニと訪問者の会話による物語論であり、絵画論になっていく。振り返るポーズの「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」は、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のもとになったと言われる絵だ。しかし、処刑前に描かれた女の目がなぜ絶望ではなく、光に満ちあふれているか。朗読劇を通じて、独自の解釈がなされる。空間を使い倒し、ジャンルを越境する、あいちトリエンナーレにふさわしい、近代建築を舞台にした絵画をめぐる朗読劇の初演だった。

2013/09/27(金)(五十嵐太郎)

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