artscapeレビュー

中原浩大 自己模倣

2013年11月01日号

会期:2013/09/27~2013/11/04

岡山県立美術館[岡山県]

筆者にとって中原浩大は、1980~90年代を代表するスター作家であり、同時に巨大な謎であった。残念ながら彼の1980年代の仕事には立ち会えなかったが、1990年代以降は多数の作品を直に見ている。なのに、いまだ自分なりの解釈すら構築できないのだ。だから本展は、遂に現われた助け舟のような存在だった。展覧会図録に載っている担当学芸員のテキストを頼りに、やっと自分なりの中原浩大像をつくれると期待したからだ。しかし、筆者の身勝手な期待は脆くも崩れ去った。図録(見本)には、過去の中原の発言やテキスト、担当学芸員による本展開催までの経過説明はあったが、肝心の中原浩大論は記されていなかった。プロの学芸員にとっても、中原は扱い難い存在なのだろうか。しかし、本展と図録を通して、彼の仕事のかなりの部分に「子ども時代にできなかったこと」が関与していることが分かった。今後はそこを切り口に中原の仕事を見ることにしよう。なお、本展では再制作品も含め、中原浩大のこれまでの仕事を網羅的に見ることができる。現代美術ファン必見の機会と言っておこう。

2013/10/17(木)(小吹隆文)

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