artscapeレビュー

プレビュー:捩子ぴじん『空気か屁』

2014年02月01日号

会期:2014/02/11

横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール[神奈川県]

捩子ぴじんが(短編以外では)2年振りの新作『空気か屁』を上演する。2011年の横浜ダンスコレクション2011で審査員賞を受賞、今回の上演はその受賞公演にあたる。受賞作『syzygy』は、一応ダンスの作品なのだが、住宅の壁面の建設に使いそうな平たい板を二人のダンサーがすごい勢いで扱い、ときには乗ったり、乗った後は滑り台のようにそこからすべったり、板が「ダンサー」のようでもあり、ダンサーたちが板のごとき「もの」でもあるという、なんとも不思議な、他に類似する例を探しにくい(板の使用という点ではKo & Edgeの『美貌の青空』を先行例とみなせなくはないけど)「唯一無二」という感触の残る作品だった。同じく2011年には、『モチベーション代行』を発表。これは、コンビニでバイトする自分自身を扱った作品で、演劇的な要素は濃いが、鳥の唐揚げをつくる機械が舞台上で油っぽい匂いをたてているなど、超リアルな作品構成が印象的だった。昨年の吾妻橋ダンスクロッシングでは、心霊現象に遭遇した体験を語るパフォーマンスを行なった。さて、このように紹介すればするほど、捩子ぴじんとは何者かがわからなくなってくる。若いころは大駱駝艦で研鑽を積んだこと、あるいは手塚夏子との交流、あるいは昨年快快とアメリカ合衆国ツアーを行なったこと……説明を増やせば増やすほど、ますますその実体はわからなくなってくるだろう。はっきりしているのは、捩子ぴじんならばなにかをやってくれるということだ。公演日には都知事選も結果が出ている。ぼくたちの生きる道がどんな道筋を辿っているのか、そんな現在と未来に抱く不安と恐れに、捩子の舞台はきっとヴァイブレーションを与えてくれることだろう。

2014/01/31(金)(木村覚)

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