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東日本大震災被災地めぐりロケ 1(石巻市、女川町、南三陸町)

2014年03月15日号

[宮城県]

毎日放送による震災遺構の取材で、久しぶりに石巻を訪れた。日和山から激しく被災した南浜町を見下ろすと、津波に耐えていた大きな病院や石巻文化センターが消え、更地同然となり、残ったものでは寺院と墓だけが目立つ。街を歩くと、かろうじて道路のパターンから、あるいはわずかに残る塀や基礎から住宅街の痕跡を読み取れる。もはや震災後に目撃した住宅地の廃墟が幻のようだ。そして火災も起きた門脇小学校のファサードには覆いがかかる。コンビニ跡地には、永遠の火があった。南相馬でも阪神淡路大震災から譲りうけた火が設置されていたが(陸前高田にもあるらしい)、以前、永遠の火という概念やイメージを調べていたので興味深い(たぶん、聖火にもつながる)。ただし、被災地では、地面の裂け目から火が出るタイプではなく、ランプ型ものだ。続いて女川へ。途中にあったひどい冠水エリアは改良されていた。津波で流され、横倒しになった江島共済組合向いの、七十七銀行跡地には、屋上で亡くなった職員の遺族のメッセージが置かれている。ここは旧交番しか震災遺構として残らないようだが、かさ上げにより、すでに地形や道路パターンまで大きく変わり、街を思い出すトリガーがかなり失われていた。

写真:上=日和山から臨む。写真中央には残された墓が見える。中=永遠の火。下=江島共済組合

2014/02/19(水)(五十嵐太郎)

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