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artscapeレビュー

世界を魅了したやまとなでしこ──浮世絵美人帖

2014年05月01日号

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会期:2014/03/30~2014/06/15

芦屋市立美術博物館[兵庫県]

浮世絵美人画ばかりおよそ120点からなる展覧会。葛飾北斎、渓斎英泉、三代目歌川豊国、歌川国芳、月岡芳年、菊川英山ら、歌麿以降に活躍した絵師による作品が揃った。片岡長四郎氏によって大正時代に蒐集された「片岡家所蔵浮世絵」からの出品である。
「やまとなでしこ」といえば、たおやかでやさしい、それでいて芯の強い女性が思い浮かぶ。日本女性の理想像といったところだろうか。仕事や家事をする姿、夕涼みや化粧をする姿、物語や歌舞伎の一場面のほか、趣向をこらした連作ものなど、登場する女性たちはみな活き活きと魅力的だ。そして、丹念に緻密に描かれたきものの色や模様が彼女たちを華やかに演出する。縞や格子、花鳥風月、小紋や絣、コーディネートや着こなしを見るだけでも楽しい。それとは対照的に、顔や身体の表情はいたって控えめ。焦点の定まらない釣り上がった目、小さくすぼめられた口元、すっと筋のとおった長い鼻、細面の顔のつくりは浮世絵の特徴とはいえどれも似通っている。きものから出ているわずかな身体、手先や足先は素肌の白さが印象的だ。きものの過剰なほどの装飾性と身体の抑制のきいた表現、このめりはりが「やまとなでしこ」たちに色香を添えている。
ところで、浮世絵の究極の醍醐味は蒐集にあるのではないだろうか。名だたる浮世絵コレクションのなかではこの片岡コレクションはけっして大きな規模とはいえないが、それでもこれだけの「やまとなでしこ」たちを手元において密かに眺めることはごく限られた趣味人にのみ与えられた特権に違いない。閑静な住宅街のなかにある小さな美術館では、その気分に一時だけ浸ることができる。[平光睦子]

2014/04/06(日)(SYNK)

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