2017年11月15日号
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artscapeレビュー

神村恵カンパニー『腹悶(ふくもん:Gut Pathos)』

2014年05月01日号

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会期:2014/04/03~2014/04/08

STスポット[神奈川県]

今作は「老い」がテーマだという。確かに、前半のある瞬間から、若い女性ダンサーは、腰をぐうっと屈めはじめて、歩みは1歩3センチくらい、老婆に変貌した。けれども、それ以上に、ぼくにはテーマが「介護」に見えた。後半から男性ダンサーがはいってきて、彼と女性は対話(「対話」というよりは介護者と被介護者とが交わす「問診」に見えた)をした後で、2人でデュオを踊ったからだ。この踊りは、不意に、互いが互いの感情を剥き出しにするところがあって、その暴力性が特徴的だった。「介護」といえば、村川拓也『ツァイトゲーバー』(2011)を連想させた。ただし『ツァイトゲーバー』が最初から、パフォーマーが観客に語りかけ、これから始まる実演内容について、丁寧な説明を用意していたのとは対照的に、「腹悶」は、2人がなぜこのようなデュオを踊るのかについての説明がなかった。説明があると、観客は冷静にこれから始まる実演がどう遂行されるのかに意識が集中するけれども、説明がないと、いまここで起きていることを観客は自分なりに推測してゆくほかなく、ゆえに、作り手との関係に緊張が保たれる。多くのダンス上演は「説明なし」なので、ことさらいうことでもないかもしれないが、こう比較すると、その緊張自体に意味があるのか、ないのかが気になってくる。神村の今作は、介護者と被介護者とが互いに内面を隠しながら、互いの立場を生きつつ、時々、その隠しごとに耐えられなくなる瞬間をフォーカスしているように見えた。その意味では、この作品の「説明なし」は、その内容と一致していた。

2014/04/05(土)(木村覚)

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