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福島県富岡町

2014年05月15日号

[福島県]

日帰りで、いわきから6号線をたどりつつ、久之浜、広野、木戸、富岡を経由し、行けるところまで北上した。Jヴィレッジ周辺は本当に原発労働者の拠点だった。いつも仙台から南下し、南相馬の方に訪れるので、反対側から行くのは、3.11の二カ月後以来である(当時は久之浜まで常磐線が通っていた)。久之浜は宮城県や岩手県の被災地と同様、破壊された住宅地は更地となり、次へのステップに向かっていたが、途中からは、ほとんど人の気配がなくなる。動きもなく、音もない街。あの日から時間が止まったまま、宮城・岩手とは全然違う状況だ。建物自体はあまり壊れていないが、人がいないから、おそらく水のインフラも復旧していない。『思想地図』の「福島第一原発観光地化計画」のコース1と言うべき「富岡町へ行く」を道案内のガイドのようにしてまわってみたが、東京から日帰りで誰でも行くことができる。放射線の影響により、人が住まなくなったエリアの広大さを、一部だが体験し、忘却が進むなか、もっと多くの人が目にしてよい風景だと思った。

2014/04/29(火)(五十嵐太郎)

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