artscapeレビュー

「アンドレアス・グルスキー」展

2014年06月01日号

会期:2014/02/01~2014/05/11

国立国際美術館[大阪府]

ドイツの現代写真家、アンドレアス・グルスキーの日本初の個展。まず展示空間に並ぶ作品のスケール感に圧倒される。2×3メートルにも及ぶ巨大なイメージに表わされる内容はさまざまである。《99セント》(1999)に写されたおびただしい商品の集積のように消費社会の一断面を切り取ったものから、《カミオカンデ》(2007)のニュートリノ検出装置のように最先端の科学技術を扱ったもの、《バンコクVI》(2011)のように現実と虚構が入り混じった川面を撮ったものなど、51点の作品がグルスキー本人の監修のもと展示されている。彼の作品においては、「画面の平面性と構築性」「絵画との類似/写真による抽象絵画」という特徴が指摘され、フラットでオールオーヴァーなモダニズム絵画との親近性が強調される。一見、その作品群はドキュメンタリーのように見えるが、じつは、巧妙に入念につくりあげられており、イメージの加工と編集の賜物なのである。デジタル技術を駆使して、複数の画像をモニター上で繋ぎ合わせたり諸要素を消し去ったりして、新たな一枚の画像を作り出しているのだ。巨大な作品を凝視すると、そこにつくりこまれた──デジタル化が進む今日ゆえに可能である──緻密な彼独自の世界がある。とても刺激的な展覧会であった。[竹内有子]

2014/05/07(水)(SYNK)

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