artscapeレビュー

焼け跡と絵筆──画家の見つめた戦中・戦後展

2014年06月15日号

会期:2014/04/12~2014/06/15

板橋区立美術館[東京都]

今日は板橋から吉祥寺へ戦中・戦後美術のハシゴだ。板橋では同館コレクションから戦中・戦後に描かれた絵画を紹介している。「戦中の前衛画壇と池袋モンパルナス」「時局の悪化と画家のまなざし」「焼け跡の風景」「事件、社会を描くルポルタージュ絵画」などいくつかのテーマに分かれているが、奇妙なのは戦中と戦後で作品にそれほど違いが感じられないこと。一様に暗いのだ。もうちょっと戦後の絵画は明るくて解放感があると思ったのに、やっぱり敗戦の重圧と脱力感は想像以上に大きかったのだろうか。おそらく戦中も戦後も画材が乏しかったので、暗くて小さい絵しか描けなかったという理由もあるかもしれない。威勢のいい戦争画もないし。目を引いたのは、福島秀子、漆原英子、草間彌生ら戦後登場した女性作家のザワつくような作品と、中村宏や高山良策らによる社会的メッセージ性の強いルポルタージュ絵画。それにしても、こんなに地味で暗い展覧会に、しかもこんなに駅から遠い美術館にいったいだれが見に行くだろうと心配したけど、そこそこ人が来ていたのは、やっぱり入場無料だからでしょうね。

2014/05/17(土)(村田真)

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