artscapeレビュー

米田拓朗「Fuefuki Channels」

2014年06月15日号

会期:2014/04/23~2014/05/11

photographers’ gallery[東京都]

米田拓朗は、この所、山梨県の甲府盆地を流れる笛吹川の流域を撮影場所とする作品を発表してきた。前回の同会場での個展「笛吹川」(2012年4月3日~5月6日)に続いて、今回も川の流れによって摩滅して形をとった「丸石」を主な被写体としている。夏に上流から運ばれてきて、川筋のあちこちに点在するようになった石たちは、冬になると水が減ったり草が枯れたりしてその姿をあらわすようになる。米田はそれらの石の姿を、一つ一つ手で触るように凝視してカメラにおさめていく。会場に展示されていた14点の写真を見ると、水の中に完全に没したものもあれば、半ば姿を見せたもの、地上に顔を出したものなどさまざまな形をとっている。「丸石」は古来信仰の対象になることも多く、道祖神として土台に据えられているものまである。それらの石たちの多彩なあり様に、米田は川の流れがもたらす生活と文化の厚みを、重ね合わせて見ているように思える。
笛吹川のシリーズは、そろそろ写真集にまとめたり、より大きな会場で発表したりする時期にきているのではないかと思う。米田の凝縮した内容の個展の背景には、おそらく膨大な数の写真が撮影されていることが想像できるからだ。ただその時には、おそらく写真だけでなく、作品の成り立ちを丁寧に記述するテキストも必要になってくるだろう。

2014/05/07(水)(飯沢耕太郎)

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