artscapeレビュー

札幌国際芸術祭2014 3日目

2014年09月15日号

会期:2014/07/19~2014/09/28

モエレ沼公園[北海道]

札幌国際芸術祭の3日目は、モエレ沼公園へ。ガラスのピラミッドに坂本龍一、武村真一らの展示を設置する。ハイクオリティの作品だが(プロジェクションでなく、小さな画面をつなぐ大画面のシステムも驚異的)、ICCを訪れたような雰囲気で、モエレ沼公園感は少し薄い。ただ、昨年時間切れで見落としたエリアを再訪するよい機会となった。




展示風景 坂本龍一+真鍋大度《センシング・ストリームズ─不可視、不可聴》、モエレ沼公園ガラスのピラミッド

市内に戻り、狸小路7丁目に隣接する《茶月斎》にて、中華のランチ。五十嵐淳がインテリアをデザインしたもの。内側からエッジのある水平連続窓を演出し、カーテンでやわらかく仕切る。ふわっとした空間のパーティションは、五十嵐淳の大阪現代演劇祭仮設劇場を思いだす。大洋ビルの他店も雰囲気がいい。


五十嵐淳《茶月斎》

残った時間は、北海道大学を散策した。農学校の建築群はあいにく保存の工事中で見学できなかったが、明治期からの近代建築が残るキャンパス、建築棟、教員食堂エルムの森、図書館前の庭などの環境がうらやましい。総合博物館、大学出版会、古河記念講堂、バイオサイエンス研究棟などの近代建築は意匠的にも興味深い。
今回、札幌の家以外は国際芸術祭のすべての会場を訪れたが、初めて見た場所はなく、ほぼ予想通りの会場だったので、美術館以外の作品展開は、もっと空間のポテンシャルを引きだせると思う。逆に無名の場所を発掘するのが、あいちトリエンナーレの街なか展開の特徴かもしれない。また札幌国際芸術祭のオフィシャル・ガイドブックは、けっこうセンスのある本で感心させられた。

2014/08/11(月)(五十嵐太郎)

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