2018年10月15日号
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artscapeレビュー

写真新世紀2014 東京展

2014年10月15日号

会期:2014/08/30~2014/09/21

東京都写真美術館B1F展示室[東京都]

最終日にようやく間に合って、「写真新世紀2014」の展示を見ることができた。審査員をしていた2010年頃までは、むろん愛着のあるイベントだったのだが、このところどことなく疎遠になった気分でいた。一つには、強い関わりを持つ必要がなくなったということなのだが、出品作品そのものに”熱”を感じなくなったということもある。1990年代前半の、「写真新世紀」がスタートしたばかりの頃と比べれば、たしかに平均的な作品のレベルは上がってきている。だが、全体的に見て、驚きと衝撃をもたらすようなワクワク感が欠如しているように思えるのだ。
今回の優秀賞受賞者は草野庸子(佐内正史選)、須藤絢乃(椹木野衣選)、南亜沙美(大森克己選)、森本洋輔(HIROMIX選)、山崎雄策(清水穣選)の5人。そのうち須藤絢乃の「幻影-Gespenster-」が9月12日の公開審査会でグランプリに選出された。その結果に文句を付けるわけではないが、あまりにも順当過ぎる気がしないわけではない。というのは、須藤はもう既に個展の開催や写真集の刊行などを通じて、写真家として高い評価を受けているからだ。「幻影-Gespenster-」の写真集には僕自身もエッセイを寄せており、失踪した少女に成り代わるというセルフポートレートのコンセプトも、作品化のプロセスも、きわめて高度なレベルに達している。はっきりいって、他の出品者からは頭一つ抜けた存在であり、受賞は当然というべきだろう。だが、もともと「写真新世紀」の存在意義は、写真の表現者の未知の可能性を発掘する所にあったはずで、既にエスタブリッシュされている作家を追認することではないはずだ。
ちょうど同じ日に東京・神宮前で開催されていた「THE TOKYO ART BOOK FAIR」(京都造形芸術大学・東北芸術工科大学外苑キャンパス 9月19日~21日)に足を運んだのだが、その玉石混淆のカオス的な状況と、「写真新世紀」のスタート当時がどうしても重なって見えてしまった。訳の分からないエネルギーの渦に巻き込まれていくような、めくるめく体験は、いまの「写真新世紀」には望むべくもないように思える。もうそろそろ、幕を下ろす時期が来ているのではないだろうか。

2014/09/21(日)(飯沢耕太郎)

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