ベアト・ストロイリ「Living Room」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

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ベアト・ストロイリ「Living Room」

2014年10月15日号

会期:2014/09/03~2014/10/08

Yumiko Chiba Associates viewing room Shinjuku[東京都]

ベアト・ストロイリは1957年、スイス生まれの現代美術アーティスト。1980年代から、都市の路上の群衆から、特定の人物を望遠レンズで抜き出して撮影する作品を発表してきた。初期においては、今回のYumiko Chiba Associates viewing room Shinjuku で参考展示されていた作品のように、小型カメラを用いてモノクロームでプリントしていたが、次第にスライドやヴィデオのプロジェクションに移行していく。また、巨大なビルボードのような大型プリントのインスタレーションを試みるなど、意欲的に作品の「見せ方」を模索していった。被写体となる人物たちの出自も欧米諸国だけではなく、アジアなど非西欧諸国の都市にまで広がっている。
今回の展示でも「見せ方」に工夫を凝らしている。タイトルが「Living Room」なのは、壁面に「壁紙」を貼り巡らして、その上に作品を並べているからである。「壁紙」の素材となっているのもストロイリの写真だが、作品より断片的、パターン的に処理されていて、「始まりも終わりも」なく、「潜在的に無限であって、そこには中心も端もない」。いわば、都市風景のひな形とでもいうべきイメージを背景として、都市から切り出されてきた人物を鑑賞するという仕掛けなのだ。
インスタレーションはとても洗練されており、顔のクローズアップと色面とを組み合わせた新作のクオリティも高いのだが、90年代から同工異曲の作品をずっと見てきたので、やや新鮮味には欠ける。ストロイリもそろそろ、「見せ方」のヴァリエーションに頼るだけではなく、次のステージを準備していく時期に来ているのではないだろうか。

2014/09/25(木)(飯沢耕太郎)

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