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東北大学五十嵐研究室ゼミ旅行(2日目)

2014年10月15日号

会期:2014/09/10~2014/09/11

[兵庫県]

まわりが何も見えない夜に着いたため、朝起きて初めて、《TOTOシーウインド淡路》から海の絶景を堪能する。そして海に向かうプールやテラス(これを眺めながら朝食をとる)。ロビーでは、お得意の大階段と大本棚が出迎える。安藤のドローイングが飾られた各部屋も広く、ベネッセハウスに近い経験を味わえるが、ここは割安な感じで楽しめるので、ここのホテルはおすすめである。
久しぶりに訪れた大塚国際美術館(徳島県鳴門市/1998年3月開館)にて、約3時間の名画鑑賞を行う。世界の有名美術館のコレクションを集めたベスト・オブ・ベストである。すべて複製の陶板画とはいえ、額縁付きで1/1のスケールで展示され、システィナ礼拝堂の天井画など、モノによっては空間ごと再現しているのが良い。小さく縮小された本の図版ではわからない細部も確認できるからだ。今回、研究室では美術と建築の本に関わるので、美術史のおさらいするために訪れた。ところで、国際美術館の向かいに、琵琶湖ホテルとよく似た大塚製薬の迎賓館がある。これも1930年代の国策による国際観光ホテルかと思いきや、職員にたずねると、1980年代頃につくったという。そうだとすれば、建築もコピーである。
遠藤秀平による福良港の《淡路人形座》(2012)と《うずまる》(2010)を見学する。いずれも津波を想定した建物だ。途中、瓦の素材で一面が覆われた《甍公園》(エイトコンサルト設計/2001)に立ち寄り、畑に点在するネギ小屋、遠景で丹下健三の《戦没学徒記念若人の広場》(1967)を眺めた。福良港の水門ほか、淡路島では瓦の使用率が高いが、これらと比較すると、改めて遠藤や安藤は外観のデザインに使わない選択をしたことがわかる。ゼミ合宿の最後は、いるか設計集団が手がけた《岩屋中学校》(1993)へ。ていねいに各部屋を案内していただく。屋根が傾斜することで、どこにいても屋根を意識させる空間、瓦屋根の集落的な風景、にぎやかな装飾的な細部は、象設計集団による沖縄の建築やポストモダンの時代を想起させる。ちなみに、少子化の影響で在校生が減少し、当初に比べて、空間の使い方はいろいろ変化したという。

2014/09/11(木)(五十嵐太郎)

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