2018年10月15日号
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artscapeレビュー

ヘルシンキ中央駅周辺

2014年10月15日号

[フィンランド、ヘルシンキ]

ヘルシンキの《中央駅》(エリエル・サーリネン/1919)周辺を歩く。19世紀末から20世紀初頭の建築がよく残っており、主な景観を形成している。そしてキアズマの美術館、劇場、改修中の国立美術館など、文化施設がコンパクトに集中している。ストックマン百貨店などの商業エリアでは、アアルトによる2つのビル、サーリネンのビルが並ぶ。
アアルトによる、改修された文化の家、街区をまるごと手がけた国民年金局、「かもめ食堂」の影響によって多くの日本人女性がカフェに集まる《アカデミア書店》(アルヴァ・アアルト/1969)、周辺の建物に比べると新参者のラウタタロ・オフィスビルをまわる。いずれも時間が経過しても、古びれないというか、味わいとかわいらしさが増していく近代建築だった。
ヘルシンキではちょうど西野達さんのアート・プロジェクト「Hotel Manta of Helsinki」が開催中だった。マーケット広場の有名なアマンダ像を構築物で囲み、個人が宿泊するホテルに変えるというものである。ベルギーでも駅の時計塔をホテル化した作品を見たが、今回は地表近くに置く。室内に入ると、ベッドの真ん中から、アマンダ像が突き出ているのが、衝撃的だ。しかし、日本だと、こうしたプロジェクトに許可が出るだろうか。
建築博物館へ。3階の常設展では、20世紀のフィンランドの建築史を紹介し、2階の企画展は、1953年から継続しているフィンランドの建築レビュー展(最近はビエンナーレ)をふりかえる内容だった。図書館も併設しており、こじんまりとした施設だが、近代の建築史を見せる博物館が、日本とは違い、常設で存在していることがうらやましい。お隣のデザイン博物館は、カフェもあり、施設の規模や展示の内容は、建築博物館より本格的だった。1階の常設では、近代から現代までのデザイン史、2階の企画展は、フィンランド航空ほか、家具、玩具、インテリアを手がけたフィンランドの「イルマリ・タピオヴァーラ」展だった。ジョージ・ネルソンとの同時代性を感じる。デザイン博物館の地下では、オランダのアーティスト、DAAN ROOSEGAARDEの展示《デューン》に遭遇した。暗い回廊のような空間において、人の動きや音でほのかに反応する光ファイバーの粒子群によるインスタレーションである。わずかな電力しか使わない、ささやかだけど、大きな空間の作品で良かった。
K2Sアーキテクツが手がけた《カンピ礼拝堂》(2012)を見学した。中央駅近くの雑然とした都市のど真ん中に建っており、外部に対して閉じる木造建築である。広場に面する異形の大きな丸いオブジェのようであり、一見して教会だとわからない。が、室内に入ると、周囲の騒音はシャットアウトされ、静寂な空間が出現し、天井の縁から光が降りそそぐ。


左:アルヴァ・アアルト《アカデミア書店》
右:K2Sアーキテクツ《カンピ礼拝堂》


西野達《Hotel Manta of Helsinki》

2014/09/20(土)(五十嵐太郎)

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