2018年10月15日号
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artscapeレビュー

これからの写真

2014年10月15日号

会期:2014/08/01~2014/09/28

愛知県美術館[愛知県]

鷹野隆大のヌード写真に「ワイセツ」の嫌疑がかかり、該当部分を布で覆ったという報道がなければ見に行かなかっただろう写真展。でも実際に見に行ったら、畠山直哉、鈴木崇、新井卓……と序盤だけでもこれはなかなか直球勝負の、まさに「これからの写真」を示唆する企画展であることに気づく。畠山は震災後の被災地風景ではなく、それ以前のダイナマイトで鉱山を吹き飛ばす瞬間を捉えた「発破写真」。シャッタースピードといい危険性といい、モチーフ的にも技術的にも人間が撮る写真の限界を示している。鈴木はカラフルな台所用のスポンジをさまざまに組み合わせて撮った写真を小さなパネルに張り、壁に整然と配列。1点1点がタブローのようにフェティシズムを刺激する一方、全体で抽象的なパターンを構成している。新井は第五福竜丸をはじめ被爆をモチーフにした銀板写真のほか、展示室の中央に3連の銀板写真二組を向かい合わせに置いた。これは暗くてよくわからなかったが、いきなり頭上の照明がパッと輝き、広島の爆心地とアメリカの核実験場の写真であることが理解される。なんとストレートな。以下もそれぞれ写真の枠組みや限界を超えるような作品が続き(田村友一郎などは「写真」らしきものすらない)、かなり見ごたえがあった。で、鷹野隆大の写真だが、性器が写ってるらしい何点かには紙が被せられ、大きな1点は布で下半分がおおわれていた。作品を撤去せず、局部だけを隠すこともせず、画面の下半分を布でおおい隠すことで決着したのは、黒田清輝の有名な「腰巻き事件」を思い起こしてもらうためだろう。1901年に白馬会に出した黒田の《裸体婦人像》が「ワイセツ」とされ、同じように腰から下を布でおおわれた事件のことで、現在では近代日本の文化の後進性を示す例として笑いぐさになっているのだ。鷹野はいたずらに対決姿勢をあらわにすることなく、美術史を参照しつつ皮肉とユーモアを利かせて対処した。決着方法としては最良の選択だと思う。

2014/09/26(金)(村田真)

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