artscapeレビュー

scene のつくりかた:牛島光太郎展

2014年11月15日号

会期:2014/10/03~2014/10/19

ギャラリー・パルク[京都府]

2003年より牛島光太郎が発表してきた「モノ」と「言葉」による作品シリーズ《scene》。言葉(文字)を刺繍した布、収集したモノなどを組み合わせ、ありふれた日常や誰にでも起こりうる物語を想起させるこの一連の作品は、2008年の「scene-36」を最後に、今年、京都芸術センターで開催された「イマジネーション・スーパーハイウェイ」での「scene-37」、「scene-38」の発表まで約6年間、制作が途切れていた。今展は「scene-1」から2008年までに至る期間と、それから約6年の期間中に牛島が制作していた《scene》の習作などを主に展示したもの。会場は、マンガや小説の一場面を合わせた平面作品、日常品や拾ったものなどを会場で組み合わせたという「モノの断片を組み合わせた」作品、雑誌、新聞、映画などのワンシーンなどをもとに描いたドローイング、最新作3点などで構成されていた。まったく文脈の異なるモノや言葉の組み合わせによって観る者のイマジネーションを掻き立てていく牛島の作品、今回は特に今展で初めて見た小さなドローイングの数々にこころ惹かれた。海外文学の挿絵のようなユーモラスなそれらの絵は、虚構と現実の間にかかる靄のようにつかみどころがなく、余韻を残す言葉の刺繍作品ともまた異なる味わいと魅力があった。

2014/10/04(土)(酒井千穂)

2014年11月15日号の
artscapeレビュー