artscapeレビュー

黄金町バザール2014

2014年11月15日号

会期:2014/08/01~2014/11/03

日ノ出町・黄金町界隈[神奈川県]

黄金町の文化的活性化を目指して2008年からスタートした、ヨコトリの連携プログラムのひとつ。今回は「仮想のコミュニティ・アジア」をテーマに、内外38組のアーティストが参加している。今日は午前11時からキュレータの原万希子さんとともに作品を見て回るツアーに参加する予定だったが、台風接近のため中止となり、室内で解説を聞く。作品を見る前に解説は聞きたくなかったけど、せっかくだから聞いてみた。なわけで、今回のぼくのテーマは「解説を聞いてから見るのと聞かないで見るのとでは作品がどのように違って見えるか」。まず、解説を聞かなきゃ理解できなかったものに、インドネシアの民主化運動のプチ記念館をつくったヤヤ・スン、ベトナムで人気のサトウキビジュースのキャラクターのルーツをリサーチしたライヤー・ベンらの作品がある。これらはその国の歴史や社会を知らなければ作品だけ見てもチンプンカンプンだ。次に、解説を聞こうが聞くまいがたいして変わらないものに、廃車やカラスの剥製などを組み合わせてインスタレーションしたフィリピンのポール・モンドック、黄金町で活動するイケメンの画家、彫刻家、写真家たちを仮想描写し、彼らとロールプレイングゲームを展開する木村了子らの作品がある。モンドックの作品には説明不能な不気味さがあるので、解説がなくても見ればわかる(見なければわからない)し、木村はコンセプトもプレゼンも明快なので解説がなくても伝わるからだ。逆に、解説はおもしろそうだったのに期待はずれだったのが、勇気のないライオンと知恵のないカカシと心のないブリキの木こりの着ぐるみを交換していくという、日中韓のアーティストによる西京人、さまざまな意味や象徴性をもつ「馬が近づいてくる音」を表現した地主麻衣子らの作品だ。これらは解説だけ聞くと最高におもしろそうだったが、期待を膨らませすぎたせいか実際の作品とのあいだにギャップが生じた。最後に、解説を聞かないほうがよかったものに、当初のプランが実現できず、結果的になにもない空っぽのスタジオを公開することになった太湯雅晴の作品がある。いや、この場合「作品がない」というべきか。これは彼の沈黙による抗議の意思表明であるかもしれないが、そんな裏事情を払拭するほど空っぽのスタジオはインパクトがあった。結論、やっぱ作品を見る前に解説を聞かないほうがいい。

2014/10/05(日)(村田真)

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