artscapeレビュー

木津川アート2014 百年の邂逅

2014年12月01日号

会期:2014/11/02~2014/11/15

木津川市の近鉄高の原駅、山田川駅、JR西木津駅周辺[京都府]

昨今は、いわゆる「地域アート」が隆盛しており、全国で無数の地域アート・イベントが開催されている。一方、文芸評論家の藤田直哉が『すばる』10月号で「前衛のゾンビたち─地域アートの諸問題」と題した論考を発表するなど、地域アートへの批判的見解も見受けられるようになってきた。筆者自身も現状は供給過剰だと思う。独善的な思い入れや安易な思惑だけで実施されているイベントは淘汰され、地域住民と確かな関係を結び、草の根レベルで共感を得ているイベントのみが生き残るだろう(行政の理解と長期的な支援も必要だが)。その点「木津川アート」は、年々地域住民の共感が増している良質な地域アートと言える。このイベントは毎年木津川市内の異なる地域で開催されているが、それゆえ各地域の市民が交流・融和する場として機能しているのが興味深い。今年の会場は私鉄沿線のニュータウンと、伝統的な集落という、隣接する対照的な地域であった。丘陵地帯を隔てて激変する環境を、美術作品がしっかり結んでいたと思う。決して大規模なイベントではないが、着実に育てて行けば、きっと木津川市の財産になるだろう。

2014/11/02(日)(小吹隆文)

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