artscapeレビュー

幾多郎と大拙──「道」のゆくえ

2014年12月01日号

会期:2014/07/16~2014/11/03

鈴木大拙館[石川県]

金沢生まれの仏教哲学者、鈴木大拙の思想と足跡を紹介する「鈴木大拙館」は今年開館3周年を迎えた。これを記念して、同郷・同年生まれで親友関係にあった哲学者、西田幾多郎との関わりを紹介する展覧会が開かれた。二人とも若くから禅の修行を積み、大拙は海外経験を通じて禅文化を広く紹介し、幾多郎は西洋哲学を学び東洋の精神的伝統との融合を探求した。本展では、二人がお互いに影響を与え合った思想的背景が、「書」と「言葉」の展示によって説明される。弟子たちへ向けた講演内容や弟子による書物なども紹介され、次世代にわたっていまも生き続ける二人の思想を伝えている。同館の建築は、谷口吉生によるもの。館内は三つの空間からなる。大拙を知る「展示空間」から始まり、大拙の心や思想を学ぶ「学習空間」を経て、自らが感じ考える「思索空間」へ。来館者が館内を回り、印象的な体験ができるのは「思索空間」。そこに座って「水鏡の庭」と呼ばれる水面を見つめて思いにふけり、周りを歩いて樹齢数百年のクスノキや紅葉に染まる森の木々を眺める。心に沁み入る時間、至福である。[竹内有子]

2014/11/03(月)(SYNK)

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