artscapeレビュー

東大門デザインプラザ

2014年12月15日号

[韓国、ソウル市]

ソウルのザハ・ハディドが設計した《東大門デザインプラザ》(2014)を訪れる。部分オープンしたものを2010年に見たときの評価は最悪だったが、全体像を見て印象は良くなった。彼女らしいダイナミックな空間で、多くの観光客も集まる、新しい都市のランドマークになっている。他のザハ建築と同様、とくに屋内外の通路、やたら天井高のある螺旋のスロープ、階段などの動線が徹底的に見せ場となっている(ショートカットせず、空間の体験を強いるべく無理矢理長く歩かせられるのだが)。ただし、逆に展示空間は弱い。4階の子供向け常設も、彼女の空間と無関係の展示デザインである。ザハの場合、移動の空間が魅力的なのだから、空港や駅など、交通施設の相性が良いだろう。デザインミュージアムは常設のコレクション展示がなく、コンテンツがまだスカスカの印象だった。内部への自然光が少ない。リベスキンドのユダヤ博物館と同様、展示がないときが、一番カッコよいタイプの空間である。夜の表情を確認すべく再訪したら、内からの光の演出をやりたかったので、開口を減らしたのかとも思った。夜も人気は絶えず、特にカップルが多い。ある意味でコンテンツがなくても、空間の力だけでこれだけの集客があるのは凄いことだ。


2014/11/27(木)(五十嵐太郎)

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