artscapeレビュー

第8回 展覧会企画公募の真髄

2015年03月15日号

会期:2015/01/24~2015/02/22

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

展覧会の企画そのものを公募するプログラム。入選したのは4組で、今回はニューヨークを拠点とするラザフォード・チャンと、淀川テクニックのひとり柴田英昭の2組の発表。チャンは「We Buy White Albums」と題し、1968年に発売されたビートルズの「ホワイト・アルバム」の初版プレスを収集、うち100点を壁に並べ、数百点をテーブル上で見られるようにしている。同じレコード(ジャケット)を並べてなにがおもしろいかというと、「ホワイト・アルバム」は文字どおり真っ白なジャケットなので(隅にシリアルナンバーが記されている)、日焼けしたり、シミや汚れがついたり、購入者が落書きしたりするなどして半世紀近い経年変化がよくわかるのだ。さらに、壁に並べた100枚のレコードの音を重ねて録音し、100枚のジャケットを重ねて印刷したジャケットに入れて3000円で売っているのだが、これがグラフィティのようなジャケットに入った現代音楽のレコードになっている。一方、柴田は「すもうアローン」と称して、他人には理解しがたい3組の風変わりな表現者を紹介している。つまり「ひとり相撲」を集めたってわけ。展示されるのは、両親の自殺という過去を知らなければごくありふれた家庭風景にしか見えない上田順平の家族写真、京都市役所前などで毎回異なるパフォーマンスを5年間で約500回行なったミネマルヒゲ代表・峯奈緒香、キノコやこけ類の研究から野糞を始め、大便が土に還るまでの過程を調査している伊沢正名の記録写真。これらは解説がなければ、いや解説があってもなかなか受け入れがたいものがある。ぼくが会場を訪れたとき、ウンよくというか悪くというか、伊沢氏の「うんこはご馳走」のトークをやっていた。興味ないわけではないが、時間がないのでスルーした。両展とも美術展の隙間を突いたいい企画だと思う。

2015/02/22(日)(村田真)

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