artscapeレビュー

志村ふくみ──源泉をたどる

2015年04月01日号

会期:2015/01/17~2015/03/15

アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]

90歳にして現役の染織家・人間国宝である志村ふくみの60年にわたる創作の足跡をたどる展覧会。作家の道に入る契機を与えた母・小野豊とその指導者・上賀茂民藝協団の青田五浪や、工芸家・黒田辰秋、富本憲吉、芹沢介らの初期における志村の活動を支えた民藝運動の関係者たちの諸作品を含め、前期と後期を合わせて約90点の資料が展示された。志村の作品でなによりも注目すべきはその色の美しさ。自然の植物から採った材料から絹糸を染め、手機で織りあげる。ガラスケースに並べられた着物作品に対面する鑑賞者は、色彩の世界に没入するような感覚を覚えるだろう。色相の微妙な重なり、グラデーション、滲み、デザイン構成の全てが渾然一体となって視覚に訴えてくる。後期の展示でもっとも印象に残ったのは、《光の湖》(1991、京都国立近代美術館蔵)。その名の通り、フランスの印象派が行なったような、湖面に反射する光の輝きを染織作品に定着させた、作家の精神性を感じさせるポエティックな世界に深く魅了された。[竹内有子]

2015/03/07(土)(SYNK)

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