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artscapeレビュー

石川直樹+奈良美智「ここより北へ」

2015年04月15日号

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会期:2015/01/25~2015/05/10

ワタリウム美術館[東京都]

石川直樹と奈良美智という組み合わせは案外悪くないかもしれない。世界の辺境を旅してきた写真家と、イノセントな作風で知られる画家は、偶然の機会から2014年夏に青森(下北半島、津軽半島)、北海道(函館、札幌、知床半島、斜里、ウトロ)、サハリン(ユジノサハリンスク、ノグリキ、ポロナイスク、ドリンスク、コルサコフなど)を一緒に旅することになった。今回の展示の中心になっているのは、その時に両者によって撮影された写真群である。石川の眼差しののびやかさ(見方によってはゆるさ)、奈良の写真の端正な画面構成の取り合わせが絶妙なのだが、それ以上に、旅の副産物というべき彼らの備品、地図、蔵書、奈良がコレクションしたレコード類などが展示されている、3Fの「二人の原点」のスペースがなかなかよかった。
もともと石川も奈良も、その作品は無菌状態で頭のなかから湧き出てきたのではなく、彼らの実生活やこれまで過ごしてきた環境のなかから育っていったものなのではないかと思う。むしろ、そういうバックグラウンドの部分に伸び広がっていくような展示のあり方が、面白い効果を生んでいた。ワタリウム美術館のそれほど大きくない空間(しかも2F、3F、4Fに分割されている)だと、まだ物足りなさが残るが、二人とも、こういう展示形態の方がのびのびと自分の作品世界を展開できそうな気がする。展覧会にあわせて制作された、タブロイド判の新聞のような形態のカタログも、500円(+税)という破格の値段も含めて、親しみやすいいい味わいを出していた。

2015/03/08(日)(飯沢耕太郎)

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