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artscapeレビュー

VOCA展──新しい平面の作家たち

2015年04月15日号

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会期:2015/03/14~2015/03/30

上野の森美術館[東京都]

今年で22回目という。初回からの常連選考委員4人は平均52歳から73歳へと高齢化し、もはやだれも引導を渡せなくなっている。ただ各地の学芸員やジャーナリストからなる推薦委員は少しずつ入れ替わってるので、新しい作家の供給にはこと欠かない(その推薦委員が選考委員の顔色をうかがってるようじゃ意味ないけど)。そんなわけで相変わらずVOCA調ともいうべきノーテンキな絵が散見されるものの、今回なぜか抽象イメージが急増している。そういえば昨夏の東京オペラシティでの「絵画の在りか」展も抽象が大半を占めていたっけ。でも見ごたえのある抽象画は少なく、むしろブラッシュストロークによる抽象パターンを巧みに採り込んだ水野里奈の、いかにもVOCA的な絵画が目を惹いた。こうした作品もさることながら、VOCA展のもうひとつの楽しみは少数ながら「平面」や「展覧会」という形式に挑戦する作品を発見することにもある。例えば、原発事故などを描いた十数枚の絵を部分的に重なるように組んだ加茂昂の作品。カタログの図版を見るとコンピュータの画面のようにフラットだが、実際にはキャンバスの厚みや隙間があるので立体的で、そうなるとキャンバスの側面や裏側も気になってくる。まだ工夫の余地はありそうだが、絵画の可能性として注目したい。さらに「VOCA展」そのものに真っ向から挑んだ(そして玉砕した)のが奥村雄樹だ。「会田誠に本気でVOCA賞を狙った絵を描いてもらう」などのプランが却下され、結局三つ目のプランである透明プラスチック板を壁に立てかけた。もし最初のプランが通っていたら、その絵は奥村の作品なのか、会田(年齢制限を10歳ほど上回ってる)の作品なのか。そしてもしそれがVOCA賞を獲ったりしたら、賞金はだれがもらうのか。また、受賞作品は買い上げられるが、買う側からすれば会田作品を市場価格よりはるかに安く購入できるチャンスではなかったか。なんて余計なことまで考えてしまいます。いずれにしても実際に展示されたのは、おもしろくもなんともない透明プラスチック板だけだったが。もうひとつ、形式としては平面だが、もっともVOCAらしくなく(それゆえ)もっとも心をざわつかせたのが村田峰紀の作品だ。悲惨なまでにささくれ立ったパネルの表面は、一見荒れ模様の風景にも、1本だけ残った木にも見えるが、これは合板をボールペンで何百回も引っ掻くというパフォーマンスの痕跡だという。ここには、おそらく洞窟壁画がそうであったように「描く(書く)」の根源が「掻く」であったろうことを思い出させる力がある。心がざわめくゆえんだ。

2015/03/24(火)(村田真)

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