artscapeレビュー

ラース・ミュラー 本 アナログリアリティー

2015年05月15日号

会期:2015/04/10~2015/05/30

京都dddギャラリー[京都府]

スイスを拠点に国際的に活躍する出版者でデザイナーのラース・ミュラー。彼の仕事を紹介する本展では、会場に設置された白いテーブルと壁面の小棚に100冊の書籍が並び、観客が手に取って読める図書室のような形式がとられた。グラフィック・デザイン展で出版メディアが並ぶ場合、実物に直接触れられる機会は思いのほか少ない。書籍が痛む可能性が高いからだ。本展ではリスクを承知した上で最も効果的な形式を採用しており、それはコンテンツに対して最適な形式と素材を追求するミュラーの仕事とも合致する。スイス・デザインの正しき継承者であるミュラー。筆者自身はその厳格さにしんどさを感じることもあるが、こうして彼の仕事を概観できたのは嬉しい限り。また、本展では建築家の藤本壮介が展示デザインを担当し、ミュラーの世界観と合致したミニマルな空間を作り上げていたことを付記しておく。

2015/04/16(木)(小吹隆文)

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