2017年11月15日号
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artscapeレビュー

日比遊一「地の塩」

2015年05月15日号

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会期:2015/04/18~2015/05/23

東京画廊+BTAP[東京都]

日比遊一は1964年、名古屋市出身、ニューヨークで俳優、映画作家として活動している。1990年代以降、独学で写真の撮影・プリントの技術を身につけ、写真家としても『imprint/ 心の指紋』(Nazraeli Press,2005)をはじめ、多くの写真集を刊行し、アメリカやヨーロッパ各地で個展を開催してきた。これほど力のある写真家が、日本ではほとんど知られていなかったのが不思議だが、今回の「地の塩」展が日本での初個展になる。
このシリーズは、1992年に日本に一時帰国した時に、奄美大島で撮影されたもので、日比にとっては最も初期の作品の一つである。にもかかわらず、その後の彼の写真に共通する、被写体に対するヴィヴィッドな身体的な反応が、既にくっきりとあらわれていることが興味深かった。画面は大きく傾いているものが多く、時には被写体の一部がほとんど真っ黒に潰れるほど焼き込まれている。その過剰ともいえるような画像の振幅の大きさは、やはり日比が俳優としての訓練を積んできたからではないだろうか。それぞれの場面に潜んでいる物語を、演劇的な想像力を駆使してつかみ取ろうとする身振りが、彼の写真ではいつでも強調されているように感じるのだ。
もう一つ、今回の展示で面白かったのは、モデルとなってくれた奄美大島の女性に宛てた毛筆書きの手紙(かなり大きな)が、写真とともに展示してあったことだ、日比は写真だけでなく、書も独学で習得し、やはり身体性を強く感じさせる独特の書体の字を書く。以前から、日本人の写真家の視覚的体験における、書(カリグラフィ)の重要性に着目していたのだが、彼の作品はそのいいサンプルであるように思える。書が写真のように、写真が書のように見えてくるのだ。

2015/04/25(土)(飯沢耕太郎)

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