artscapeレビュー

守屋友樹「gone the mountain / turn up the stone: 消えた山、現れた石」

2015年05月15日号

会期:2015/04/14~2015/04/26

Gallery PARC[京都府]

マッターホルンの山の写真を出発点に、複数の写真や立体の空間的配置の中で、「山」をめぐるイメージが連鎖的に反応し、意味の獲得と喪失を繰り返しながら、記憶と認識のズレについて問いかける。岩石を写したと思しき写真は、山の部分が切り抜かれた写真を見た後で目にすると、切り抜かれた山の形なのかただの石ころなのか判然とせず、意味の曖昧な領域へと漂い始める。小高く盛り上がった雪面を写した写真は、山の形が切り抜かれた写真の白い空白と響き合う。くしゃくしゃにした紙切れの写真は山の稜線をなぞり、脱ぎ捨てられた衣服の写真もまた、峡谷のイメージへと錯覚を誘う。逆さまに掛けられた山岳写真の中の輪郭線は、ネオン管のラインへと置き換えられ、白々しく空間を照らし出す。イメージの目まぐるしい転移、反復、連鎖の中で、「マッターホルン」という固有名は失われていく。
このようにして、守屋友樹は、写真イメージのもつ多義性と戯れ、かつ三次元のモノへと展開し、イメージ同士が干渉し合う磁場を作り上げることで、自由な連想の遊戯へ誘うと同時に、記憶と認識の危うさを突きつける。それはまた、写真は複数の意味を多義的に呼び込める場であるからこそ、逆説的に、写真それ自体は次々と意味を充填されることを待ちかまえる空白に他ならないことを暴き出している。

2015/04/22(水)(高嶋慈)

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