2017年11月15日号
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artscapeレビュー

楢橋朝子 写真展「biwako2014-15」

2015年05月15日号

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会期:2015/04/15~2015/04/26

galleryMain[京都府]

galleryMainの移転リニューアルのオープニング企画。倉庫を改装した新スペースに、写真家の楢橋朝子が2014 年から15 年にかけて琵琶湖を撮り下ろした新作が展示された。
展示作品はいずれも、水中に浸かりながら岸辺の光景を撮った、半水面/半陸上・空が写った写真。揺れる波間に身を置き、コントロールを手放して撮影することで、安定した水平線が画面から姿を消し、水面/陸上、自然/人工、形の定まらない流動体/輪郭をもった固体といったさまざまな境界が不安定に揺らぎ、遠近感までもが狂っていく。生き物のように蠢く水、その彼方にあるはずの岸辺の光景は蜃気楼のように曖昧にぼやけ、クリアな輪郭を失い、不安定に斜めにかしぎ、あるいは眼前にせり上がった奔流に山並みや建物、ヨット遊びの人などが飲まれていくような感覚を覚える。画面を見ている私たちもまた波間に浮き沈み、飛沫に飲み込まれてしまうような不安定さ、重力を失った身体が上下する浮遊感……だがその感覚は不思議と心地よい。安定した二項関係、構図、視点が撹乱されるさまを、浪間に漂う身体感覚を共有し、撮る快楽とともに身体感覚ごと追体験して味わうことが、楢橋作品の大きな魅力であるだろう。
加えて今回の展示では、琵琶湖が一年間かけて撮影されている。咲き誇る桜を背景に半ばまどろむかのような灰色混じりの水、夏の青空を映し出す透明感をたたえた青、雪山の白さに突き刺さるような冴え冴えとした冬の黒、鉛のように重くたゆたう鈍い灰色……季節ごとに色を変え、多彩な表情を見せる湖面が実に魅力的だった。

2015/04/26(日)(高嶋慈)

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