artscapeレビュー

他人の時間 TIME OF OTHERS

2015年05月15日号

会期:2015/04/11~2015/06/28

東京都現代美術館[東京都]

グローバル社会だからこそ露呈してきた「他人」との時間的・空間的隔たり感をいかに埋め、どのように接続していくか。そんなテーマに、日本、シンガポール、オーストラリアの4人のキュレーターが選んだアジア太平洋地域のアーティスト18人が向き合った。フィリピンのキリ・ダレナの《消されたスローガン》は、50-70年代のデモの写真からスローガンを消したもの。デモというのはスローガンの内容よりデモ自体の形式に訴求力があるということがわかる。インドネシアのサレ・フセインは、独立運動が起こった30年代の写真を元に描き起こした絵を100点ほど出品。写真を絵に描くのは、声を出して歴史を読むのにも似た行為かもしれない。ここに河原温が出ているのはいささか唐突だが、「日付絵画」シリーズは(ほかのシリーズもそうだが)まさに「他人の時間」を表現したものだろう。いま挙げた作品はすべてモノクローム。色彩もテーマも人選も華やかさに欠けるなあ。

2015/04/10(金)(村田真)

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