artscapeレビュー

アート(AM Ver.) 伊東宣明 / Nobuaki Itoh

2015年06月01日号

会期:2015/05/05~2015/05/10

Antenna Media[京都府]

2013年にアートと制度を巡る問題をテーマにした映像作品を発表した伊東宣明。本展で発表した新作のテーマは「アートとは何か」だ。伊東は全国各地のランドマークで自画像を撮影し、「アートとは何か」をカメラに向かって語りかける。彼にとってアートは、不可視で手に入れられないものや、到達不能な理想に向かって邁進するアーティストの姿勢そのものに内在する。19世紀ロマン主義以来の理想に基づいた価値観と言えよう。ただ曲者なのは、当の本人がアートの理想を本当に信じているのか、それとも敢えてドン・キホーテ役を演じたのかが定かではないことだ。おそらく伊東は意図的に両義的な作品を作ったと思われる。観客に作品の二律背反性を気付かせ、アートとは何かを自問自答させること。そこに本作の真意があるのだろう。なお本作は、今年2月から4月にかけて愛知県美術館で発表した作品の京都バージョンである。

2015/05/08(金)(小吹隆文)

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